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タンパク質結晶とは?

タンパク質の結晶化は、生体分子が規則正しく配列して微細な結晶構造を形成する現象です。19世紀半ばの初期報告以来、構造生物学や医薬品製造への応用が進展し、インスリンや酵素製剤など多彩な産業利用が実現してきました。結晶化技術は分子構造の解明だけでなく、高機能バイオマテリアル創製の起点としても注目されています。

酵素の産業利用の歴史

Protein Crystal Material / PCM とは?

Protein Crystal Material(PCM)は、細胞内で結晶化するタンパク質を活用して、標的タンパク質をその結晶内に閉じ込め外界ストレス(乾燥、高温、pH変動など)から保護する技術です。細胞内で自発的に生成された標的タンパク質内包結晶をそのまま機能性材料として活用する新しいバイオマテリアルです。遺伝子設計から培養、細胞破砕まで一貫して細胞内で結晶化させることで、高純度かつ形状制御された結晶粒子を効率よく得られます。PCMは生体触媒やバイオセンサーなど幅広い用途展開が期待されています。

PCM の利点

① 煩雑な精製工程が不要

細胞内でPCMに目的酵素を高密度に内包、抽出、酵素を徐放することで、物理的に安定的に高純度な目的物を得ることが可能です。従来技術では必要不可欠であったクロマトグラフィーのなどの高コストに繋がる煩雑な精製工程が不要となる”酵素の細胞内精製”が可能になります。従来の精製プロセスと比較して、約80%の省時間化が可能です。

② 保存性の大幅な向上

PCMは外的環境に非常に堅牢であり、高温/乾燥/pH/塩などの諸条件に対して高い耐性を有します。これまで保存が難しいことが課題であった酵素も容易に保存性を高めることが可能です。

③ 酵素の細胞毒性を抑制

目的酵素はPCMに内包されることで、細胞内空間で物理的に隔離されるため、細胞構造を破壊する酵素機能を抑制することが可能です。

④ 有機溶媒中で反応

PCMに内包された目的酵素は、通常は酵素が変性してしまう有機溶媒中でも構造が維持されており活性状態を有します。有機溶媒で反応が必要な疎水性基質の反応も可能になります。

⑤ 複数酵素のカスケード反応

単一PCMに複数の目的酵素を内包することができます。複数の酵素が連携するカスケード反応がワンポットで可能となり、反応効率を大幅に向上させることが可能です。

⑥ 補酵素再生系の構築

単一PCMに補酵素及び補酵素再生酵素の同時内包が可能です。高価な補酵素の連続使用は不要となります。

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